需要が高まるヨーロッパの寒い冬を前にして起こったドイツとロシアを結ぶ海底の天然ガス供給パイプラインノルドストリームの破壊!
ノルドストリームとはどんな設備で、破壊犯人は誰なのか?日本企業や日本への影響はどれほどあるのでしょう?
犯人の可能性を5つ挙げ、詳細に検討してゆきます。
ノルドストリームとは?
ノルドストリームは、欧州のバルト海の下をロシアからドイツまで走る海底天然ガスパイプラインのシステムで、ロシアの企業が運営している。それぞれ2本のパイプラインからなるノルドストリーム1とノルドストリーム2からなります。
ノルドストリーム1は2012年に全面開通し、年間総ガス容量は550億m3を供給してきました。但し、欧米諸国のロシア制裁に反発し、ロシアはノルドストリーム1によるガス供給を大幅に削減し、保守点検を理由として8月に停止した状態となっていました。
ルドストリーム2についても、2021年9月に全面開通したものの、ウクライナ侵攻を受けて、ドイツが、2022年2月22日にノルドストリーム2の認証作業を停止したため、稼働していません。
ノルドストリームの建設に当たっては、EUの盟主ドイツがシュレッダー、メルケル政権時に価値観の違うロシアに安全保障上の問題があるとの国内外の声を抑えロシアのエネルギー依存に大きく舵を切ったという経緯があります。
ノルドストリーム破壊が深刻
2022年9月26日午後、バルト海のボーンホルム島近くのパイプラインでガス漏れが発生し、海面上に大量のガスが漏出しました。ノルドストリーム1と2の計4本のパイプラインのうち3本が損壊し、現場では地震学者によって爆発が観測されており、何者かによる破壊工作の可能性が疑われていました。
調査したスウェーデンによれば、パイプライン2本の損壊は「爆発」で生じたもので、「重大な破壊工作への疑いが強まった」とされています。
ノルドストリーム損壊は「爆発」が原因と断定、警察 https://t.co/9FT93jAAe3
— cnn_co_jp (@cnn_co_jp) October 8, 2022
また、地球規模で言えば、海上に噴出していたガス漏れは一応止まったということですが、天然ガスに含まれるメタンは大気中に熱を閉じ込める効果が二酸化炭素よりも80倍高いため、地球温暖化を加速させるのではと懸念されていました。
ノルドストリーム破壊犯人は誰なのか?
非常に不可解な事件で、ロシアと米国が互いに犯人は相手方だと非難しあっています。
破壊工作の能力、動機、結果としての利益、損失の観点から、ノルドストリーム破壊犯人は誰なのか?を推定してみました。
可能性のある犯人について、3要素に関して、一覧表としました。
破壊工作により、最大の損失を被り、なんの利益もないドイツを初めとするEU諸国は、まず除かれます。
残る4つの犯人説について詳しく見てゆきます。
ロシア犯人説
ドイツなどEUが冬になり、さらに天然ガスの供給が必要な時期を狙って、ロシアが破壊工作をしたという説です。
・工作を仕掛けられる能力を持つ
・電気代が値上がって冬場が近づけば、欧州諸国の住民はロシアを経済的に孤立させる西側の戦略に異議を唱え始めるはず。ウクライナ支援で欧州諸国が背負う負担が大きくなることを狙う。
⇒インフラに損害を与えず、ガスの供給をストップさせるだけでいいはず
⇒数十億ドル規模の自国の資産を破壊することになる。永久に供給がストップすれば、EUへの交渉手段を失うことになるリスクがある。
・ノルドストリーム2のパイプライン1本は破壊されず残された
ノルドストリーム2供給開始のプレッシャーをかけることができる
・欧州のエネルギー供給の脆弱性を改めて、強調できる
・ロシアにできることを見せつけた
米国犯人説
・工作を仕掛けられる能力を持つ
・ロシア犯人説により、欧州が、より団結してロシアに対抗する
⇒米国が仕掛けたことが明るみに出れば、欧州との信頼関係はなくなり、対ロシアでの対応に致命的な損失を与える。
・天然ガスのさらなる高騰は、米国の輸出にとって利益となる
⇒米国内のインフレをさらに加速させ、中間選挙に影響を与える
ウクライナ犯人説
・ウクライナ支援の欧州をロシアの脅威をあおり、より結束させる
支援疲れや、電気代高騰による政権批判が国民の間に高まっている国もあります。
海底での破壊工作の能力はないだろうというのが、否定する一番の理由ですが、クリミアでの破壊工作がウクライナによるものだとすれば、全く可能性がないわけではありません。
直接手を下さなくても、反ロシアのテロ集団に依頼することがあり得るかもしれません。
⇒ウクライナが関与したとなると、欧米の支援は一度に消失するという大きなリスクを負います。
ロシア軍部強硬派犯人説
・プーチンのやり方は手ぬるいので、さらに状況を緊迫化させる
戦況が悪化しているのは、プーチンのやり方が手ぬるいためだとして、自ら核兵器は使えないロシア軍部の強硬派が、自国の設備を破壊して、相手に対する憎悪を盛り上げることを意図したというものです。
日本の満州事変の関東軍による柳条湖事件のように軍部が暴走したのと同様です。
プーチンの統制が効かなくなっている可能性があります。
他の犯人説と違い失うものは、自身の安全を別にすれば、全くないのが特徴です。
実際そうだったとわかっても、プーチンは自分の指導力の陰りに、表ざたにしない可能性も高いと思われます。
軍部内で、うまく手をまわして、工作部隊を実行させることができるかどうかがカギです。
ノルドストリーム破壊で日本企業への影響は
日本企業は、ノルドストリーム経由の天然ガスを購入しているわけではないので、世界全体での天然ガスの供給が減少する可能性により、市場価格が高騰し、日本が購入している費用がさらに上昇するという影響を受けるというところでしょうか。
さらに、ロシアが犯人なら、シベリアからの天然ガス供給ラインも破壊工作やトラブルなどを理由に止められるかもしれないという懸念がさらに高まります。
まとめ
- ノルドストリーム破壊犯人としては、生じた損失の大きさ、破壊工作能力の点から、欧州やウクライナが関与した可能性は低い
- ノルドストリーム破壊犯人として、ロシア軍部強硬派を含め3つの可能性が挙げられる
- 日本、日本企業への直接の影響は天然ガスのさらなる高騰だが、ロシアやロシア軍部が犯人なら、サハリン1,2のパイプラインの破壊工作もあり得るということに
https://umifesta-kyoto.com/zaporozhye-nuclear-power-plant-exploded/
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