血液サラサラ薬イグザレルトのジェネリックはいつ発売されるのか?

トピックス

知人のOさん(70歳台前半)は、2種の投薬で昨年の医療費が40万円以上もかかり、今後完治する可能性はほとんどないと言われており、一生服用が続くことに大きな不安を抱いています。

持病を2つ持っていて、1つは、不整脈(心房細動)を指摘された60歳から、服用しているいわゆる血液サラサラの薬イグザレルトです。医療費は3割負担で、1日1錠服用となるため、年7万円以上かかります。
もう一つは、3年ほど前にかかった右目の網膜の病気で、浮腫を防ぐため、3か月ごとの眼内注射(アイリーア)が、有効ですが、やはり3割負担で、1回約5万円の費用が必要です。合わせるとこれだけで、年30万円近く、検査費用や、その他の病気で受診も含めると、40万円以上の医療費を確実に負担することになっています。

昨年2月15日、厚生労働省は、後発品として28成分127品目を承認しましたが、偶然上記2種の医薬が含まれておりました。
各企業からの薬価収載希望を経て6月に追補収載される予定となっており、大いに期待していましたが、いずれも薬価収載されませんでした。

厚生省は、増加する医療費を削減する施策として、後発医薬品を2020年度末までの間のなるべく早い時期に80%以上とする目標を掲げ、現在後発医薬品の数量シェア:79.0%(2022年9月薬価調査)となっています。
このような状況で、承認されながら、なぜ高価なイグザレルトを含む高価な医薬のジェネリックが発売されないのでしょうか?

イグザレルトを中心に問題を深堀します。

[st-kaiwa1]最近ジェネリックの話題が満載だ! [/st-kaiwa1]

イグザレルトのジェネリックの現状

イグザレルトのジェネリックの承認状況をまとめます。

特許権の経緯

リバーロキサバン(Rivaroxaban商品名イグザレルト)は血栓の治療と予防に使用される経口抗凝固薬で、ドイツの製薬会社バイエルが2007年に特許を取得し、2011年に米国で医療用に承認されました。日本では、厚労省が。2012年1月に使用承認しています。

日本では、基本となる物質特許が、2000年12月11日にバイエルによって、出願され、特許登録されています。(特許4143297)。
通常の特許であれば、特許権の有効期間は出願から20年で、その後は誰でも使えますが、医薬の場合は、厚生省への申請などで、承認、発売に時間がかかることを考慮し、再審査期間として、期間延長が認められています。

リバロキサバンの場合、成人に対する再審査期間は2012年1月18日~2020年1月17日(8年間)で終了しているものの、小児に対する再審査期間が2021年1月22日~2025年1月21日(4年間)で、継続しています。

売上

2016年の時点で、バイエルは、この薬が130か国で認可されており、2,300万人以上の患者が治療を受けていると発表しています。2020年には、米国で86番目に一般的に処方されている薬であり、800万を超える処方箋がありました。
また、2022年4月には、バイエル薬品・トリアナ社長が、日本市場で、イグザレルトは売上815億円で2.9%増、アイリーアは売上852億円、前年比10.2%増と2ケタ成長したと発表しました。2021年に小児の静脈血栓塞栓症の適応を追加し、OD錠やドライシロップも投入したことで、さらなる売り上げアップを狙っていると思われます。

また、トリアナ社長は、アイリーアのバイオAGやイグザレルトのAG(オーソライズド・ジェネリック)の承認取得について、「今後の後発品の参入を見据え、それに対抗できるオプションを持っておきたいとの考えで承認を取得した。戦略上のオプションを持っておくことなどによって、両剤の価値の最大化を目指す」などと語っています。

リバロキサバンは、日本を含む世界で、バイエルの稼ぎ頭になっています。

イグザレルトのジェネリックが発売されない3つの理由

以上の状況を踏まえ、なぜイグザレルトのジェネリックが発売されないかを考えてゆきます。
・バイエルは薬価が約半分となる後発品の出現により、イグザレルトの売り上げが落ちることを防ぎたいとの意図があると思われ、実際
2022年7月22日にも、バイエル薬品は、「リバーロキサバンに関する特許権について」の4回目となる謹告文を掲載しました。当面の後発薬品メーカーの参入を阻止したいとうことです。

「当社は、リバーロキサバンを有効成分とする製品を保護する特許として、・・・を保有しており、そのうち・・・については、特許延長登録を取得済みです。・・・とくに、有効成分リバーロキサバンにかかる特許第4143297号の特許存続期間は5年延長されております点には是非ご留意ください。」

一方で、バイエルの子会社(バイエル薬品販売)に後発品の承認をとらせて(2022年2、月15日)いつでも自社でジェネリックを販売できるように、準備しています。

・ジェネリック専業メーカーが、特許紛争を恐れて参入を躊躇している。
リバーロキサバンの成人に対する再審査期間は2012年1月18日~2020年1月17日(8年間)ですでに終了してます。但し、小児に対する再審査期間が2021年1月22日~2025年1月21日(4年間)と継続中である状況です。
ジェネリック専業メーカーが成人用として、イグザレルトを売り出した場合、「先発医薬品の再審査期間が終了していること」という条件に、引っかかるかどうかが、紛争となる可能性があり、訴訟を懸念している向きがあります。

・ジェネリック専業メーカーに、製造を拡張する余裕がない
2020年以降、相次いで発覚したジェネリック医薬品メーカーの不正で、現在でも、供給不足は医薬品全体の3割近くに及んでおり、3年ほどしないとこの状況は改ざんされないとも言われています。
ジェネリック医薬品メーカーは、従来の販売薬を、製造上の問題などを指摘されることなく、確実に増産してゆくことが、最優先となっていると想像されます。
バイエルの子会社以外からイグザレルトのジェネリック承認申請も、ありません。

なお、バイオ医薬品であるアイリーアも、ジェネリックに相当するバイオシミラーが存在し、2021年8月18日にEUで、英国では8月31日に、2021年9月17日にFDA(米国)で承承認されています。前記のように、日本では、2022年2月に承認されたわけです。バイオシミラーは新薬の薬価の7割となるという違いはありますが、医療費削減には効果があります。この件については、イグザレルトと同じく、バイエルの製品ですが、多少状況が異なりますので、別途論じたいと思います。

なお筆者は、企業の知的財産部で、数十年医薬関係の特許を扱ってきました。

[st-kaiwa2 r]新型コロナのワクチンが、開発されないことといい、最近のジェネリック会社の不祥事といい日本の医薬メーカー、厚生行政はどうなってるの? [/st-kaiwa2]

ジェネリックの発売を実現するために

厚労省は、当初の医薬品の数量で80%とする医療費削減目標がクリアーできたなら、費用についての目標を掲げ、特に高価で、大量に継続して使われているバイオ医薬含めた医薬をターゲットとした新たな施策を掲げるべきではないでしょうか?
特に日本のメーカーは、一時的な感染症の薬品より、高齢化社会で、一度使えば一生使用せざるをえない高血圧やコレステロール薬に注力したために、新型コロナ感染症に対してほとんど何もできなかったのではと思えます。

また、今回のケースのように、成人用は再審査期間が切れているのに、小児用が切れていないから成人用のジェネリックを発売できないという状況を改善する必要があります。
イグザレルト場合、売り上げ、圧倒的に高齢者を含む成人用だと考えられます(心房細動患者の平均年齢は75歳)。
小児用のように別の用途の再審査を次々と申請してゆけば、永遠にジェネリック薬を販売できないことにもなりかねず、特許制度の根幹にかかわる問題となります。
実際に訴訟が起こって、特許裁判所で、判断が出るのを待つことなく、厚労省、特許庁など行政が動くべきではないでしょうか?

また、抗がん剤オプジーボで、用途が、皮膚がんから肺癌までに広がり、売り上げが大きく増えたことを理由に、薬価を引き下げましたが、売り上げを増やし、用途を拡大しているイグザレルトに適用できないのでしょうか?

バイエルのHPには、「私たちの目的 “Science for a better life” に沿って新たなソリューションの開発を通じて、人々のクオリティ・オブ・ライフの向上に貢献していきます。」と企業姿勢が示されています。
イグザレルトについては、子会社がジェネリックの製造承認を取っているわけですから、子会社は、特許上の問題なく、製造販売できるはずです。
また、AG(オーソライズド・ジェネリック)として、先発品のデータ、製造工程を活用できるわけですから、効力、安全性もより保障されます。

再審査制度は、新薬メーカーに、新薬開発の費用を回収する期間を与えるのが目的です。
さらに、利益を追求する必要があるのしょうか?

企業理念から言って、バイエル薬品の子会社が、ジェネリックの発売に踏み切ると信じたいところです。
[st-kaiwa3 r]このままでは、特許制度の根本思想に反することになるのでは? [/st-kaiwa3]

ジェネリックへのSNSの反応

[st-kaiwa3] 不整脈の薬が高額やん。
2ヶ月分で12,000円。
副業無かったら、結構痛い出費やね。
年間、72,000円もかかるのか…
イグザレルトの薬価が高いらしい。ジェネリックはあと4,5年かかるらしく…。
40万近く薬代で飛ぶのか😵
命を守るためなら安い😁
[/st-kaiwa3] 引用:https://twitter.com/climb_tw/status/1217293577622970372
[st-kaiwa4] 不整脈と痛風とADHDの薬漬けになってます、出来れば効果の薄いジェネリックより先発品を貰いたいのですが、そんなことしたら破産してしまいます😧
[/st-kaiwa4] 引用: https://twitter.com/hiroya2020lol/status/1336626814177820673
[st-kaiwa5] この間ジェネリック医薬の不祥事があったやんか。
それに関連してか、なぜか今医薬品の不足が起きている。
今日も僕が日頃好きで処方していたフェルムと言う薬がいつ入荷するかわからない状態と言われた。
[/st-kaiwa5] 引用:https://twitter.com/onj77824324277w/status/1397750960621899777
[st-kaiwa6] ジェネリック医薬
メーカー不祥事相次ぎ
後発薬の確保「綱渡り」
滞る供給、悩む病院や薬局
[/st-kaiwa6] 引用:https://twitter.com/1000syogun/status/1439837967552372736

まとめ

[st-minihukidashi fontawesome=”fa-hand-o-right” fontsize=”90″ fontweight=”bold” bgcolor=”#212121″ color=”#ffffff” margin=”0 0 0 0″]わかりやすくまとめると[/st-minihukidashi]
  • 現時点で、イグザレルトのジェネリックの発売予定はない
  • イグザレルトのジェネリックが発売されない3つの理由を挙げた
  • 発売が、実現するためには、バイエルの決断、厚労省の指導、ジェネリック専業メーカーの挑戦に期待するしかない
[st-kaiwa2 r] 一生服用し続ける薬だけになんとかならないのかと思う[/st-kaiwa2] [st-mybox title=”関連” fontawesome=”fa-file-text-o” color=”#ccc” bordercolor=”” bgcolor=”#fafafa” borderwidth=”0″ borderradius=”5″ titleweight=”bold” fontsize=”” myclass=”st-mybox-class” margin=”25px 0 25px 0″] この記事を見ている人は以下の記事も見ています
https://umifesta-kyoto.com/amd-eylea-biosimilars-when-released/
https://umifesta-kyoto.com/elderly-truncated-pension-devaluation-soaring-prices/
https://umifesta-kyoto.com/all-electric-house-regret-soaring-electricity-bill/

[/st-mybox]
タイトルとURLをコピーしました