健康寿命の真実:男性73歳、女性75歳の誤解を解明

2019年の行われた厚労省の統計から、平均寿命は男性81.41歳、女性87.45歳、健康寿命は男性72.68歳、女性75.38歳と公表されています。

これから、単純に計算すると、不健康期間または、介護期間が、男性8.73年、女性12.07年にも及び、高齢者本人もその家族も絶望的な気持ちになります。

本当でしょうか?筆者の知人を見渡しても、男性73歳、女性75歳の半分の高齢者が、自立できず、介護を受けているとはとても思えません。

実際、職場、スーパーマーケット、ジム、プール、ハイキングなどで元気な高齢者は、日常的に目にするところで、男女とも70歳代前半で「健康寿命が尽きる」というのは、あまりに実感とかけ離れています。

一方で、75歳以上で要介護認定を受けている人は23%(平成27年・高齢社会白書)にすぎないのですからまったく、計算が合いません。

実はこれには、大きな誤解があるのです。その原因を詳しく見て、実態に近い数値を探りましょう。

健康寿命へのネットの反応

75歳あたりで介護されるようになると皆誤解してる!!

健康寿命が誤解を生む3つの要因

健康寿命の調査法の問題

国民生活基礎調査において、「あなたは現在、健康上の問題で日常生活に何か影響がありますか」「あなたの現在の健康状態はいかがですか」という質問を行って、「日常生活に制限のない期間の平均」「自分が健康であると自覚している期間の平均」を算出し、年代別人口や生存率などを加味して導いた数値です。
つまりアンケートによる本人の答えで決まるわけです。

例えば、毎週千メートル以上泳いでいても、膝が悪くて、歩行に杖を使っていれば「日常生活に制限のない」とは言えないでしょうし、白内障で夜間の車の運転ができなければ、昼間買い物や、図書館に出歩いていても、「自分が健康であると自覚していない」と答えることもあり得ます。

健康寿命の定義の問題

健康寿命とは、平均寿命から寝たきりや認知症など介護状態の期間を差し引いた、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間のことをいいます。この指標は、2000年に世界保健機関(WHO)が提唱しました。

ここで、平均寿命とは、零歳の者があと平均何年生きられるかを示した数ですので、健康寿命も零歳の者があと平均何年健康で生きられるかということを示します。
オギャーと生まれた零歳の者が、という点がポイントです。

まず、平均寿命は、男性81.41歳、女性87.45歳(2019年)ですが、65歳になった人の平均寿命は男性84.83歳歳、女性89.63歳(2019年)となります。65歳までに亡くなった方を除くため、寿命が長くなるのです。
同様に健康寿命は、男性72.68歳、女性75.38歳(2019年)ですが、65歳になった人の健康寿命は男性79.43歳、女性81.71歳(2019年)となります。
寿命同様に、65歳までに、亡くなった方を除くため、健康寿命は長くなります。

これにより、不健康期間(介護期間)は、男性8.73年⇒5.4年、女性12.07年⇒7.92年と4割近く減少します。

不健康期間や介護期間が切実になるのは、生まれた時ではなく、65歳の高齢者となったときですので、これがより実感に近いと思われます。

要介護認定に基づく65歳健康寿命

令和5年に公表された65~74歳と75歳以上の被保険者について、それぞれ要支援、要介護の認定を受けた人の割合を見ると、65~74歳では1.4%、3.0%であるのに対して、75歳以上では8.9%、23.4%となっており、75歳以上になると要介護の認定を受ける人の割合が大きく上昇するとされています。

それでも、75歳以上で要介護の認定を受けた人は、23.4%で、約半数に介護が必要という先の数値と大きくかけ離れています。

各都道府県では、介護保険の利用者のデータから65歳健康寿命というデータを取っています。
介護保険の要介護1、2の段階は以下となっており、要介護1以下の要支援1,2を含め、要介護1では、「基本的に一人で生活できる状態」とされています。
要介護1
基本的に一人で生活できる状態だが、要支援2と比較して運動機能のさらなる低下だけでなく、思考力や理解力の低下、問題行動がみられることがある。
要介護2
食事や排せつなど基本動作でも部分的な介助が必要な状態で、要介護1よりも思考力や理解力の低下、問題行動がみられることがある。

東京保健所長会方式の65歳健康寿命とは、65歳の人が、何らかの障害のために要介護認定を受けるまでの状態を健康と考え、その障害のために認定を受ける年齢を平均的に表すものを言います。

65歳健康寿命(歳)=65歳+65歳平均自立期間(年)

65歳平均余命(年)=65歳平均自立期間(年)+65歳平均障害期間(年)

*平均自立期間:要介護認定を受けるまでの期間の平均、健康と考える期間

*平均障害期間:要介護認定を受けてから死亡までの期間の平均

 

これに従いますと、東京都のデータでは、2014年に、要介護2以上を障害とした場合の65歳健康寿命は男性82.62歳、女性85.69歳となっています。要介護期間はそれぞれ、1.67年と3.47年となり、実感に近いものとなります。

 

以上を表にまとめました。

全国(2019年) 全国(2019年) 要介護2以上(2016年東京都)
男性 平均寿命 81.41歳 65歳の平均寿命 84.83歳 84.29歳
健康寿命 72.68歳 65歳の健康寿命 79.43歳 82.62歳
不健康期間 8.73年 不健康期間 5.4年 1.67年
女性 平均寿命 87.45歳 65歳の平均寿命 89.63歳 89.16歳
健康寿命 75.38歳 65歳の健康寿命 81.71歳 85.69歳
不健康期間 12.07年 不健康期間 7.92年 3.47年

健康寿命をできるだけ伸ばして医療費を削減したいとの意図は良いとしても、実態や実感とあまりにずれていると、単なる脅しに聞こえてしまいます。

健康年齢の定義を明確にするとともに、アンケートの内容に、具体的な不健康状態を明記して、回答者で差が出ないようにすべきではと思えます。

まとめ

    • 健康寿命が誤解を生む原因を明らかにし、より実態に近いのは、65歳健康寿命であることを説明した
    • 健康寿命の調査法の改善とともに、健康寿命の正しい意味を知らしめ、誤解を解く努力をすべきと考える

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