アップル社のCEOは強烈な個性のジョブズ氏である。経営トップ交代のクック氏に移行するのが、いかに大変か。巨大化し、同時にほころびの出る頃を詳しく描いている。
スティーブ・ジョブズを称賛した本は多いが、この本はかなり、辛口で酷評も受けている。しかし、良く調べ、研究され、しかも面白い。
「沈みゆく帝国」2014年6月23日初版 日経BPマーケティング ケイン岩谷ゆかり著 井口耕二訳
ジョブズ氏プロフィール
Steve Paul Jobs
1955年2月24日~2011年10月5日
カリフォルニア州サンフランシスコに生まれる。
Appleの創業者、CEO
業績は
1.パーソナルコンピューターという概念の普及。
2.ipodによる音楽業界の変革。
3.ipad,iphoneの発表。
宗教は仏教(曹洞宗)
クック氏プロフィール
Timothy Donald “Tim”Cook
1960年11月1日に生まれる。
アラバマ州ロバーツデール出身
出身校オーバーン大学、ヂューク大学
職歴
1982-1994 (IBM)
1994-1998 (Intelligent Electronics)
1998 (コンバック)
1998- (Apple)
著作者プロフィール
ケイン岩谷ゆかり
Yukari Iwatani Kane
1974年に東京に生まれる。
(職業) ジャーナリスト
ジョージタウン大学外文学部卒業School of Foreign Service
3歳の時に渡米(父の仕事の関係)。シカゴニュージャージー州で子供時代を過ごす。
10歳で東京に戻る。
15歳メリーランド州へ。
大学3年の時に上智大学へ1年間だけ、留学をする。
アメリカのニュースマガジンU.S. News and World Reportを経て、
ロイターのワシントン支局、サンフランシスコ支局、シカゴ支局で勤務する。
2003年に東京支局に特派員として配属。(通信業界、ゲーム業界を担当する。)
2006年にウォール・ストリート・ジャーナルに転職をする。東京特派員(テクノロジー関係を担当する)。
2008年にサンフランシスコに配属。(アップル社担当)
本書執筆のために退職をする。
翻訳者プロフィール
井口耕二 いのくちこうじ
1969年に生まれる。
東京大学工学部を卒業する。
米国オハイオ州立大学大学院修士課程修了。
大手石油会社勤務。
1998年に技術、実務の翻訳者として、独立をする。
翻訳の傍ら、翻訳フォーラムを友人と主宰する。
(主な訳書は以下)
スティーブ・ジョブズⅠ・Ⅱ(講談社)
スティーブ・ジョブズ驚異のプレゼンー人々を惹きつける18の法則(日経BP社)
アップルを作った怪物―もうひとりの創業者、ウォズニアック自伝(ダイヤモンド社)
ジェフ・ベゾス果てなき野望―アマゾンを作った無敵の奇才経営者(日経BP社)
本書の目次
著者まえがき
序章 かって私は世界を統べていた
第1章 去りゆくビジョナリー
第2章 ジョブズの現実歪曲
第3章 CEOは僕だ
第4章 在庫のアッティラ王
第5章 皇帝の死
第6章 ジョブズの影と黒子のクック
第7章 中国の将軍と労働者
第8章 アップルの猛獣使い
第9章 S I r I の失敗
第10章 アンドロイドに水素爆弾を
第11章 イノベーションのジレンマ
害12章 工員の幻想と現実
第13章 ファイト・クラブ
第14章 きしむ社内
第15章 サプライヤーの反乱
第16章 果てしなく続く法廷闘争
第17章 臨界に達する
第18章 米国内で高まる批判
第19章 アップルストーリーのほころび
第20章 すり切れていくマニフェスト
終章 2013年11月
謝辞
訳者あとがき
解説
原注
本書からの抜粋
(150頁) …クックは、このような考え方を基本にキャリアを積み上げてきた。
オーバーン大学における学生生活は、効果がはっきりと感じられる経験をもたらしてくれた。
学費の足しにするためクックは産学協同の教育プログラムに参加し、その一環としてヴァージニア州リッチモンドのレイノルズアルミニウム社でしばらく働いた。その際、ちょうどほとんどの社員がレイオフされた時期だったので、クックは社員の代わりに社長を助けて経営にかかわることになる。会社経営とはどういうものなのか、その一端をかいま見ることができたのだ。のちにスコッチ製紙でも働いたので、従来型産業がどういうところなのかを…
(154頁) …になったが、クックはまだまだ続ける気満々だった。凄まじい締まり屋でもある。もっといい所にいくらでも住めるのに、ずっと、エアコンのないしょぼい平屋ビルの一部屋を借りていたほどだ。自分のルーツを思い出させてくれる場所だったらしい。ようやく家を買ったと思ったら今度は、200平米方メートルあまりと控えめな物件だ。敷地は普通の半分だし、駐車スペースも車1台しか用意されていない。下着はノードストロームが年に2回催すセールで買う、
(252頁) これに対してアップルは、7週間後、報復として13件の特許を侵害しているとしてノキアを提訴。アップルの顧問弁護士は次のような声明を発表した。「他社は我々の技術を盗むのではなく、それぞれが技術を開発しなければなりません」この騒動の背景には、複雑で不完全な特許制度がある。特許に関する法律は国によって異なり、特許による保護も国単位でしか実施されない。米国の場合、出願の種類、出願日、また、特許維持手数料の支払いなどを考慮に入れたややこしい計算が必要だが、発明に対する特許は最長で20年間守られる。
(507頁) 解説 外村仁
…だからだろうか、この本が発行されたときの米国での反応は、これまでにないものだった。2014年3月18日に本が売り出され、それから数時間以内にアマゾンに「星ひとつ」の酷評が見事なほどずらっと並んだ。この厚い本を読み切るにはどうやっても数時間かかるだろうに、と思うのは私だけではなかっただろうし、誰がこんなレビューを書いているのか、組織的な行動なのではという憶測もあった。また、さらに異例なことに同日、アップルCEOティム・クックは…
コメント
(アマゾンレビュー)
よく取材されていて、我々が知らなかったアップルの状況が詳細に書かれています。フォックスコンで起きたことや、サムソンとの特許係争などからアップルの姿勢の発端を伺うことができます。
今後のアップルがどんな風に変わって行くかは分からないが、
開発の精神だけは無くさないでいてもらいたいな〜
(紀伊国屋書店レビュー)
ブラック・オア・ホワイトではないけれど、何事も光と闇があるということで(^_^;) アップルという巨大なリスク…。日本の産業もただではすまないでしょうね、これは。Apple、Google、Amazon…etc。便利コワすぎる世の中!そして自発的にシステムに支配されていく自分…。うーん、SFが現実化していきますね。
ジョブズ亡き後、ぱっとしないですね。コンセプトもありきたりだし、生活を一変させるようなリリースもない。沈下する一方のAppleをサムスンとの訴訟を絡めたルポです。
(読書メーターコメント)
読み応えありました。淡々とした語り口でアップルのこれまでを興味深く知ることができました。偉大な企業でいるための施策は並大抵ではない。「会社が失敗するのは、やるべきだと従来言われてきたことを、きちんとやったから」という指摘は納得の警鐘です。
まとめ
・スティーブ・ジョブズ氏の凄まじい生き方。受け継いだクック氏の葛藤。サムスンとの法廷闘争など、読者を引き付ける展開がある。
・手ごろな値段のアップル製品の裏には過酷な労働者の犠牲から目をそらしてはならない。
・成熟したアップルのこれからの課題は?

こんな分厚い本なのに読み進む。全く退屈しない。