プロ料理人必携のジル・ノーマン著「スパイス ブック」(山と渓谷社)

昭和バブル期から平成にかけて豪華本が多数出版されました。
内容もしっかりしていて、繊細なイラスト、鮮明なカラー写真をふんだんに使って、まるで美術書です。
リビンングに飾るも良し、お店の一角にも華を添えます。
図鑑を‘一気読み’するのは大変です。
休憩の合間にそっと開いて、異国の風を感じてはいかがですか?
「昭和、平成の名著シリーズ」今回はスパイスの図鑑です。

ジル・ノーマン著「スパイス ブック」(山と渓谷社)1992年初版…“The Complete Book of Spices”
日本語訳:長野ゆう、監修:高橋哲也
原書はアメリカを拠点とするIACP(国際料理専門家協会)の”参考書部門賞”を受賞した本です。

著者プロフィール

ジル・ノーマン :(Jill Norman)
・イングランドのミッドランド地方(The Midlands region)で育ちました。
・父親は大きな市場菜園と野菜店を所有し、彼女は幼いころから食材に深くかかわっていました。
・ロンドンのキングスカレッジ(King’s College)でスペイン語とフランス語を学習しました。・
・大学卒業後はペンギンブックス社に就職しました。
仕事は当時安い料理本、ワイン本が少なかったため、これを拡充するのが役目でした。
そして、ジル・ノーマンにとってエリザベス・デイヴィット氏の出版にかかわったことが、大きな影響を受けることになるのです。
・ハーブとスパイスの権威として、世界的に認められるようになりました。
(以下受賞歴)
・1986年にセインズベリーのクラシッククックブックで、グレンフィディック賞
・1990年に“The Complete Book of Spices”でIACP賞
・1994年エリザベス・ディヴィット氏の “Harvest of the Cold Months:The Social History of Ices”をジル・ノーマン編集で、完成し、アンドレ・サイモン賞。
・2014年The Guid of Food Writersはジル・ノーマンに対して生涯功労賞。
・2006年ジェームズ・ビアード財団賞The Cook’s Book(DK Publishing)

※エリザベス・デイヴィット氏とは…Elizabeth David(1913年12月26日―1992年5月22日)
イギリスの料理作家で、イギリス料理にとどまらず、国内外の料理を紹介し、出版し、家庭料理の活性化、改革に貢献しました。プロの料理人にも影響を与えました。多くの賞、勲章を授与され、また、イングリッシュヘリテージブルーのプラークが建てられました。(その人が住んでいたことを示す名誉ある看板)フードライターとしては初めての出来事です。

この本の内容

異国の香りを食卓に
1. スパイスのはるかな旅
2. スパイス図鑑
パラダイスグレイン、ディル、セロリ、マスタード、チリ、キャラウェイ、カシア、シナモン、コリアンダー、サフラン、クミン、ターメリック、セドアリー、レモングラス、カルダモン、クローブ、アサフェティダ、フェンネル、スターアニス、ジュニパー、ガランガル、ナツメグ、メース、ニゲラ、ポピー、オールスパイス、アニス、ペパー、チュバブ、スーマック、セサミ、タマリンド、アジョワン、フェネグリーク、バニラ、ファガラ、ジンジャー、カフィルライム,小ガランガル、ケンフェリアガランガル、マンゴー、カレーリーフ、スクリューパイン、マーラブ、ポメグラネート、ワサビ

3. 世界のミックス スパイス
七味唐辛子、ゴマ塩、五香粉、花椒塩、サンバルウラック、サンバルバジャック、ローストナムプリ、生野菜用のナムプリレッドカレーペースト、カレーパウダー、サンバルパウダー、パンチフォロン、ガラムマサラ、チャットマサラ、グリーンマサラ、スリランカのカレーパウダー、コロンボパウダー、バハラット、ザグ、ベルベレ、タビル、ハリッサ、ラセラヌー、ザーター、スカッピのスパイスミックス、キャトルエピス、メランジュクラシック、ピクリングスパイス、プディングスパイス、ケイジャンシーズニング、バーベキュースパイス、ジュニパースパイス、パプリカスパイス、フェンネルスパイス、サンバルトラッシ、野菜料理用のナムプリ、マドラスのカレーパウダー、チャーマサラ、西インドのカレーパウダー、ワットスパイス、チュニジアの五香スパイス、ダッカ、カニのボイル・魚料理用のシーズニング

4. スパイスのきいた料理
スープとオードブル、魚料理、野菜と穀類の料理、サラダ、デザート、パン ケーキ ビスケット、ソース 保存食、ドリンク

5. スパイスのある暮らし
いにしえのスパイスライフ、ポプリとポマンダー、薬としてのスパイス、保存と下ごしらえ

索引
スパイスの買える店.

項目別抜粋例

・(スパイス図鑑)→(カフィルライムCitrus hystrix)
東南アジアに原生する木で、タイやインドネシアでは果実の皮や葉を料理に使っています。欧米でもオリエンタルショップなどで生や乾燥したものを見かけることがあります。葉にはレモンにも似て、また花のようでもあるさわやかな香りがあって、鶏肉や魚の料理に加えると独特の風味が生まれます。…。果実…洋梨のような形をしていて、ごつごつとしている。…。葉…2枚の葉がつながっているような独特の形をしている。…乾燥した葉…生の葉より芳香が少ないが代用として使うことができる。(カラー写真あり)

・(スパイス図鑑)→(カレーリーフMurraya koenigii)
ヒマラヤ山脈、南インドおよびスリランカに原生する美しい木で、インドでは多くの家庭で自家栽培し、葉を料理、なかでも特にベジタリアン料理に使っています。たたくとカレーに似た、独特の香りが出ます。…乾燥した葉…味はまったくなく、生の葉のついたひと枝と同じだけの香りを出すためにはひとつかみほどの葉が必要になる。…生の葉…ほとんどは枝についたまま売られていて料理に加えて香りを出し、そのまま食べる前に取り除く。(カラー写真あり)

・(世界のミックススパイス)→(中世のミックススパイス)→(スカッピのミックススパイス)
ローマ法王ピオ5世に仕えた料理人バルトロメオ・スカッピの考え出したミックススパイスでその頃好評を博した彼の著書「料理の芸術」に紹介されています。
シナモンスティック4本、クローブ5g、ドライジンジャー15g、他…作り方…シナモンスティックを細かく砕き、材料を全部合わせて細かなパウダー状に…。

・(世界のミックススパイス)→(アメリカのミックススパイス)→(ケイジャンシーズニング)
アメリカでは各社が独自に開発したミックススパイスが市販されていて、特許が取られ、…ルイジアナ州のケイジャンやクレオールなどの民族料理は、最近になってアメリカ全土や外国にまで人気が出てきました。…ニンニク大1個、タマネギ小1/2個、パプリカ小さじ1、ブラックペパーの粉末小さじ1/2、クミンの粉末小さじ1/2、マスタードの粉末小さじ1/2、他…作り方は…。

・(スパイスのある暮らし)→(薬としてのスパイス)
…現在の欧米諸国ではスパイスを薬用に使うことはほとんどなくなってしまいました。けれど中国では今もいわゆる漢方として処方されているほか、インド古来の医術のアユルベーダでは何千年も前と同じようにスパイスを処方しています。こうした東洋諸国ではカシアやジンジャー、カルダモン、ペパー、ゴマ、ポピーなどがもっとも古くから薬用に使われてきたものと考えられています。一方メソポタミア文明ではディル、…。

この本についてのネットのコメント

(アマゾン海外のコメント)

英国…ちょうど私が望んでいたもの、本の中の情報は私が必要とするものであり、いくつかの余分なものは非常に役に立ちました。

アメリカ…すべてのスパイスは色で描かれており、味、使用方法、保管方法が簡潔に記載されています。料理にスパイスを組み合わせる能力を広げるのに役立つとわかっています。また、ほかの国の料理を試してみる自信になります。

フランス…この本が大好きで、たくさんの情報、素晴らしい写真、レシピなどが大好きです。きっと5つ星です。

 

まとめ

・料理に携わっている人たちにとって、そばに置いておきたいこの一冊です。
これを手に取ると、プロとしての高揚感に包まれます。
・スパイスの生産国やスパイス販売ショップの項目は執筆された当時と現在とで、ずれが生じています。それを踏まえて読みましょう。
・コメントを見ると、日本国内よりも世界の人たちに認知されているようです。

これまで掲載した「昭和、平成の名著シリーズ」

西暦和暦書籍(書籍名は簡略あり)
1960昭和35年頭の良くなる本
1966昭和41年IBMワトソン
1968昭和43年三好長慶
1969昭和44年J.M.ローブ氏伝記
1973昭和48年日本医家伝(旧版)
1981昭和56年零からの栄光(旧版)
1991平成3年料理に恋してフランスへ
1992平成4年名曲街裏通り
1992平成4年ストラディヴァリウス
1992平成4年スパイス ブック
1992平成4年ユニオンジャック
1999平成11年怖い寄生虫
2009平成21年忘れられない脳
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