令和の恐慌、崩落はいつ起きるのか?どのように備えておくべきか?
 経済ショックが起きてから、関連本を読みあさっても、手遅れでしょう。
 過去の体験談、金融界重鎮の伝記などが参考になります。
 読みやすく、ためになり、面白いのがあるのです。1969年に出版された「ウォール街の魔術師」。
 古すぎて読みづらいのかと思われましたが、平易で、スラスラと読めます。
 訳者が上手いのか。この時代の経済がシンプルなのか。
「ウォール街の魔術師」 ラルフ・G・マーチン著 山下竹二訳 日本経済新聞社
 (THE WIZARD OF WALL STREET)
 1969年 10月 29日初版
ジェラルド・M・ローブ氏の生い立ち
ジェラルド・マーチン・ローブ(Gerald Martin Loab)
 1899年7月24日~1974年4月13日
・ローブはカリフォルニア州サンフランシスコに裕福な家庭の子として生まれた。
 しかし、1906年の大地震により、事業は打撃を受け、さらに、彼が8歳の時に母方の祖父と同時に父も亡くした。
 ・母は子供たちを連れて、豪邸生活から下宿屋に移った。
 ・父の列車事故死の和解金を母と子供2人と均等に分配した。母は自分で管理するように命じた。
 この時から、お金の使い方を失敗しながらも学んでいった。
 ・ローブは学生時代に小児まひにかかってしまい、
 高等学校での勉強があまりできず、読書にふけった。多くの知識を本から学んだ。
 ・21歳の時には債権と株式の違いも分からない若者であったが、債権のセールスマンが彼の最初の仕事であった。ニューヨーク取引所会員ではない2流の会社であった。
 ・次はニューヨーク取引所会員の一流業者であるマクドネル社に転職した。
 主に株式売買を扱っていた。
 彼の仕事は統計係、顧客係、売買担当の補佐が仕事であった。
 そのうちほかの社員が忙しい時に顧客は彼にも直接注文に応じてくれるように頼んだ。
 彼の顧客が急速に増えていった。
 ・さらに1924年にカリフォルニアのE・Fハットン&カンパニー社に就職した。顧客の世話をしつつ、市場ニュースの日報を書くことも任された。
 ・カリフォルニアのE・Fハットン&カンパニー社で業績を上げていたが、再び小児麻痺が悪化し手術が必要になった。
 ・上司のバン・アントワープは優秀な医者の集まっているニューヨークで手術するように勧めた。
 休暇を取ってニューヨークで手術をし、大成功であった。
 ・ニューヨーク滞在中もE・Fハットン&カンパニーのニューヨーク本社と連絡を取って市場動向調査を続けていた。熱気が違う。
 ・かねてより、本場ニューヨークに魅力を感じていたローブ氏はサンフランシスコのE・Fハットン&カンパニー社の上司であるバン・アントワープ氏(師であり、尊敬もする)にニューヨーク本社移動を願い出た。
 ・最終的にE・Fハットン&カンパニー社の会長に就任しました。
この本の目次
I 古き良き時代
 II 大恐慌前のブーム
 III ウォール街の戦い
 IV 新時代への出発
1929年の大恐慌への対応
1929年当初、相場はなお急騰を続けていた。株価はもはや専門家でもはかれる尺度ではなかった。(131頁)
 株価収益率はほとんどの銘柄がばからしいほど高水準であった。
 銀行貸し出しが史上最高となった。もはや相場は現実性を失っていた。
 (132頁)
 ローブ氏は危険水準に来ているのは分かっているが、危険信号を2つ見た。
 その一つは急騰しているはずの一番人気の株に買いささえしている者がいる。
 これが、彼を決断に走らせた。
 1929年10月(昭和4年)彼の持ち株と顧客の株をすべて売って、現金化し、ファースト・ナショナル銀行に預けた。安全な短期貸し付けにした。
 ほとんどの銘柄がなお上昇していた。
 彼は相場から離れたかった。
 すぐに戻れなくするためにヨーロッパに向けて船旅に出た。
 3週間後に株は急落した。(136頁)
 1929年10月24日ニューヨーク株式大暴落が始まった。…暗黒の木曜日
この本の特徴
この本は株の売買のタイミングを学べる良き教科書でしょう。
 しかし、テクニックを学ぶだけでは寂しい。
 ローブ氏の生きざま、経験から来る珠玉の言葉。
 何度も大失敗を体験し、次にどのように生かしたのか。詳しく説明しています。
 また、深く読めば、コネのない貴方に“アピール法”を伝授している場面に遭遇するかもしれません。(39頁)
 何度も読み返したくなる本です。
まとめ
・ローブ氏に青春はありません。常に時間は勉強と市場動向に充てられました。
 ・1929年の恐慌時の対応はなかなか真似のできることではありません。
 ・ローブ氏の親の時代は豪邸に住み、1階、2階に女中がおり、料理人、庭師、乳母、御者が住み、2頭の馬につながれた馬車。それが一転して、下宿生活となる。ローブ氏の成長には母の影響が見え隠れします。


