城山三郎氏と、伴侶とのやり取り。どの夫婦にも、みられる風景。ですが、要約や抜粋など、この作品に失礼です。わずか173ページの小冊子です。
まずはお読みになる事をお勧めします。
城山氏の奥様容子さんへの思いが、文脈から、痛いほどに、伝わって来ます。
城山三郎著「そうか、もう君はいないのか」 平成二十二年八月発行 新潮文庫
城山三郎氏のプロフィール
城山三郎 (本名 杉浦英一)
・1928年8月~2007年3月
・名古屋市中区生まれ。
・1945年 愛知県立工業学校(現名古屋工業大学)入学。
・1945年 大日本帝国海軍に志願入隊。海軍特別幹部練習生として伏龍部隊(特攻隊)に配属。訓練中に終戦を迎える。
・1946年 東京産業大学(現一橋大学)予科入学。
・1951年 容子さんと最初の出会いが訪れる。
・1952年 卒業。
・愛知学芸大学(現愛知教育大学)商業科文部教官助手に就任。
・1954年 容子さんと結婚をする。
1954年 読書会「くれとす」を始める。「近代批評」の同人に加わる。
・末森城址付近に引っ越しをし、「城山三郎」と名乗る。
・1963年 以降、作家業に専念する。
・1992年 紫綬褒章叙勲を断る。
・2001年 個人情報保護法が閣議決定を受けて、成立に反対し、廃案に持ち込む。
・城山三郎氏のお別れ会には中曽根康弘氏、小泉純一郎氏、河野洋平氏、土井たか子氏、五木寛之氏らが参列しました。
・経済小説の分野を切り開いた作家として有名。歴史小説も名作が多い。
・(受賞)
1957年 第四回文學会新人賞
1959年 第四十回直木賞
1975年 吉川英治賞、毎日出版文化賞
1996年 第四十四回菊池寛賞
2002年 朝日賞
・(著書)
男子の本懐、落日燃ゆ、雄気堂々、小説日本銀行、総会屋錦城、鼠。小説予科練、黄金の日日、零からの栄光 他多数あり。
目次
目次はありませんが、
・本編
・父が遺してくれたもの(139頁~)次女・井上紀子
・解説 児玉清(162頁~)
本書からの抜粋
(22頁) 七つボタンの制服の憧れもあって、海軍に志願し、少年兵となった。待っていたのは、「大義」も何もなく、「人の嫌がる海軍に志願してくるバカがいる」と、朝から夜中まで、ひたすら殴られ続ける毎日。
(23頁) はげしく生き、そして死んでしまった者たちに代わって、何ができ、どう生きればいいのだろう。私は大義の呪縛からいかにして自分自身を回復して行けるのだろうか。
(162頁)解説 児玉清
たった今、この本を読み終えた方はいったいどんな気持ちでいるのだろうか。僕はこの本の最後の頁を閉じた瞬間、清々しく身を包む深い感動の波に心を震わせながら、無情な天を仰いだものだ。何と素敵な夫婦だろう。…
(カバー・裏表紙)
彼女はもういないのかと、ときおり不思議な気分に襲われるー。気骨ある男たちを主人公に、数多くの経済小説、歴史小説を生みだしてきた作者が、最後に書き綴っていたのは、亡き妻とのふかい絆の記録だった。…
コメント
(読書メーター)
・通勤中に読んだので、涙や鼻水が出そうになって困った。『昭和二年生まれの流儀』を読んで、城山氏の長編を読む前に…と軽い気持ちで読み始めたのだが、城山氏の作品のバックボーンになっていたのが、奥様であったのだろうということをひしひしと感じた。…
・「そうか、君はもういないのか」 話しかけては妻の不在を思い知る。 作者城山三郎さんが死の間際に綴る妻 容子さんとの鮮やかな思い出の日々。 妻の旅立ちを自覚せざるを得なくなった時の城山さんの恐怖や後悔、失ったあとの心細さや喪失感には喉がぎゅっと締めつけられる。
・タイトルに惹かれて購入した本でしたが、思いっきり泣いてしまいました。読んでわかるのは作者の城山さんの奥さんへのラブレターとも取れるような内容。奥さんを亡くしてからの城山さんの喪失感溢れる文章に涙し、奥さんの亡くなる間際まで茶目っけたっぷりなところにまた涙し、…
まとめ
・城山三郎氏の書きかけの遺稿をもとに編集した作品である。
・城山三郎さんの奥様容子さんへの思いが、文脈からあふれている。
・「読者とお前と子供たち、それこそおれの勲章だ。それ以上のものはいらない」「僕は戦争で国家に裏切られたという思いがある」と言い、叙勲を辞退した。…エピソード(ウィッキペディア)

