体験した過去の記憶が脳に蓄積して、脳から離れない病気”超記憶症候群”に苦悩している本人が語る実話。果たして記憶力に優れすぎるといったい何が起こるのか?
今回紹介の書籍
“忘れられない脳”(記憶に閉じ込められた私)
ジル・プライス&バート・デービス著
橋本碩也訳
ランダムハウス講談社
2009年8月19日 初版
この本の目次
プロローグ 記憶に追われて
1章 記憶とふたりぼっち
2章 忘却は天賦の才
3章 子どものころ
4章 日の名残り
5章 自我の確立
6章 時間の考古学
7章 記憶を話して手放す
8章 窓が開く
9章 やり直し
10章 記念碑としての記憶
エピローグ
謝辞
訳者あとがき
本人のプロフィール
ジル・プライス (Jill・Price)…旧姓ローゼン・バーグ
1965 年12月 30日 生まれ
南カリフォルニア出身
“超記憶力”の持ち主
2006年12月に脳科学専門誌のNeurocaseに仮名“AJ”として、紹介されている。
共著者のプロフィール
バート・デービス (Bart・Davis)
ブロンクス科学高校とストーニーブルック大学を卒業し、英語の学士号とソーシャルワークの修士号(MSW)を取得しています。
小説家、ノンフィクションライター、映画特集2作品など。
訳者のプロフィール
橋本碩也 (ハシモトセキヤ)
1947年に三重県志摩市に生まれる。1970年に日本リーダーズダイジェスト社に入社する。
月刊誌編集、書籍の企画取材、執筆、翻訳、製作などに従事する。
1985年に証券研究所に転じ、証券・金融・経済アナリスト。
そのあとはフリーランスとなり、講演、著作、翻訳に活躍。
重要な部分の抜粋
(10頁)私が日々の出来事をいろいろと記憶するようになったのは8歳(1974年)ごろからだ。当時の記憶はややあいまいだが14歳(1980年)になったころからのことはほぼ完璧に記憶にとどめている。人は「そんなすばらしい記憶力をもっているなんてうらやましい」と思うかもしれないが…私の記憶はさながら生活を再現するホームムービーのようだ。…記憶が暴れまわるままに…
(13頁)インターネット時代の到来が、私にヒントをもたらしてくれるのではないかと考えたのだ。…
その幸運とは記憶についての研究第一人者であるカリフォリニア州立大学アーバイン校の教授、ジェームズ・マゴー博士のサイト見つけたこと。
(33頁)そんなすごい記憶力があったら、学校へ行っていたころはさぞかし勉強が楽だったしょう、とうらやましがられるが、実は暗記がとても苦手だ。…学生時代、私の異常な記憶力は勉強の障害こそなれ、何の助けにもならなかった。
コメント紹介
(アマゾンカスタマーレビュー)
普段でも突然よみがえるいやな記憶に悩まされることがあります。しかし、この著者の場合は桁違いにつらいということが伝わってきました。
(紀伊国屋書店レビュー)
「忘れていくことって大事だ」と痛感させてくれる本。過去の辛い記憶がずっと消えてくれないのだとしたら、私はとてもではないが生きていけないような気がする。
超記憶といっても記憶力がつよい特定分野と弱い分野があり、ありがたいものではなく呪いのようなものだ。辛い記憶、嫌な思いも忘れられないのは拷問に近いだろうなぁと思った。
忘れっぽい自分から見れば羨ましい限りなのだけれど、忘れる事が出来ないというのもきっと辛いものだ。時間が薄めてくれる悲しみも、ずっとそこにあるのだから。
まとめ
・世界的にもまれな超記憶力の持ち主の半生が描かれている。
・超記憶力を持っていることがいかに大変か、誰にもわかってもらえないもどかしさから、自力で解決していくストーリーである。
・本人にとっては“記憶”は切実な問題だけあって、良く研究され、あらゆる角度から“記憶”が考察されている。