「ルネサンス料理の饗宴」(ダ・ヴィンチの厨房から)

ルネサンス期を食物史でとらえると、当時のイタリア・フィレンツェの情景が、パスタと共に蘇ってくる。
著作者の豊富な知識は読者の期待を裏切らない。
「ルネサンス料理の饗宴」(ダ・ヴィンチの厨房から)デイヴ・デ・ウィット著2009年4月22日原書房

著作者と翻訳者のプロフィール

(著作者)デイヴ・デ・ウィットDaveDeWitt
作家、編集者、プロジューサー。料理に関する多数の著作があり、特にトウガラシほかスパイスの研究を専門とする。
・学歴: 文学士号バージニア大学、1966年 リッチモンド大学、1967年修士号
・彼は電子メディアでキャリアをスタートさせました。バージニア州リッチモンドのトップクラスのWRVAラジオでの任務を含む、ラジオアナウンサーとして学部と大学院を経て、デイブはリッチモンドとニューメキシコ州アルバカーキの両方でオーディオ/ビデオ制作会社を所有していました。彼は、何百ものラジオやテレビのコマーシャル、30分間の企業ビデオの脚本、制作、声を担当しました。1974年にニューメキシコ州に移住しました。
1999年 チリペッパー百科事典で、ヴェルサイユのワールドクックブックアワード、英語のベストスパイスブックを受賞。
2015年 「Precious Cargo: How Foods from the Americas Changed the World」でIACP賞、最優秀料理史賞を受賞。そのほか多数受賞している。
https://www.dave-dewitt.com/about-dave/
(翻訳者)
須川綾子 東京外国語大学米語学科卒業。
富岡由美 青山学院大学文学部英米文学科卒業。

本書の目次

第一章 戦争を生き延びた郷土料理
第二章 偉大な料理人たちの登場
第三章 海外からの作物の流入
第四章 教皇のための料理
第五章 ダ・ヴィンチの厨房夢の饗宴
第六章 素晴らしきイタリア料理

本書からの抜粋

ダ・ヴィンチお気に入りの一皿89頁
(ミネストローネ・トスカーノ)
ダ・ヴィンチの好物はシンプルなミネストローネスープだったとする伝記作家は多い。……
材料:水、白インゲン豆、ニンニク、タマネギ、トマトペースト、セロリ、にんじん、キャベツ、ポロねぎズッキーニ、バジル、クローヴローズマリー、リゾーニかオルゾーパスタ、塩
スープ用の鍋に湯を沸かし、豆を入れ2時間茹でる。……
☆分量は本書に記載されていますので、参考にしてください。

マカロニが肝心116頁
注目すべきは、ルネサンス初期には、乾燥パスタは肉の値段の約2倍するほど高かった.ことだ。また、マルティーノ当時の宮廷付きのシェフたちは、既製のパスタを買う金銭的余裕があっても、自家製にこだわった。……最初は農民の食べ物だった米が、やがてリゾットになったように、パスタも宮廷から一般家庭に至るまで、誰もが口にするものになったのである。……

砂糖と砂糖菓子124頁
砂糖はアラブの商隊が東方からアレキサンドリアにもたらした「香辛料」のひとつだ。その、数量は少ないものの、ヴェネツィア人がヨーロッパ全土に広めた。ヴェネツィアはルネサンス以前から香辛料貿易を支配し10世紀には、早くもアレキサンドリア経由でインドから様々な香辛料と共に砂糖を輸入している。……砂糖がイタリア以外のヨーロッパの国々に広まるには数世紀かかった。イギリスは12世紀末、デンマークは1374年……

ネットの反応

ルネサンスの食は十字軍によるイスラムからの影響や新大陸からの影響もあって面白いなと思いました。しかし1529年ミラノ大司教は晩さん会で出されたという、「砂糖とシナモンで味付けしたキャビアとオレンジのフライ」というのは美味しいのだろうか…。

メニュー的なものだけを知りたくて読み始めたのですが、食にまつわる当時の人々の考えや生活を伺い知ることができて、面白い本でした。食材にも宗教的な理由から、上等な食べ物と下等な食べ物があるというのに驚きつつも、何だか納得。肉は鶏肉がランク的に一番上で、理由は翼があって神の元に近いから。ごぼうや地中に潜っているものほど卑しいという理屈らしい。野菜を食べる習慣もイタリアだけだったみたいですね。

県立図書館からのお取り寄せ。 信長がらみの本を読んだら、同時代の、ヨーロッパのことが気になりだして・・・と飛躍して。 副題の、ダ・ヴィンチの厨房の部分は少ないけれど、しっかりした資料から、当時の食材や調理法が興味深く解説されている。 米が定着していたことに驚き。 当時のイタリアは、野菜を多く食べることで、ヨーロッパの中では異端だった。 トルコからの影響も大きかった。 へぇ~。 今度は、トルコが気になる・・・
(以上読書メーターコメントより)

まとめ

・著作者は料理研究家であり、テレビ、ラジオに活躍し、才能があふれているのが本書を読めば、わかる。読みやすく、レシピも現代風にアレンジして、作りやすそう。
・出てくる料理は美味しそうで、作りたくなる。
・ところどころに出てくるイラストも当時をイメージして、理解が深まる。

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