朝日新聞血風録(稲垣武著)

今回紹介の昭和、平成名著シリーズは“朝日新聞血風録(稲垣武著)です。
日本の不思議?→1945年に太平洋戦争に敗北し、日本は310万人の犠牲者が出ました。(数字に諸説あり。)
このような悲劇を二度と繰り返さないために、検証、反省、これからのあるべき指針を示さなくてはいけないことは第一級の課題であります。(未来ある子供たちのためにも)
今年で2025年。これまで、強烈な論文、指針が出て来ないのが不思議でした。
確かに天皇責任を追及した論文が発表されたあと、右翼に脅され、尻切れトンボになった事例は何回かありました。
だが、それだけでしょうか?
この本はその疑問の一部を解明しています。
現在ネットの普及で、埋もれていた事実が、次々と明るみに出てきました。
実際に検証、考察された書物はたくさん出ていたことが、わかってきました。
我々の目に止まらなかったのは、新聞、テレビの偏向報道、情報操作が原因でした。
分かった今、信頼していたのに、裏切られた気分です。ショックです。
朝日新聞血風録(稲垣武著)1991年12月25日 初版 文藝春秋

著作者プロフィール

昭和9年12月(1934年)生まれ。埼玉県。
京都大学文学部西洋史学科卒
昭和35年朝日新聞社入社。福井支局勤務。
昭和38年神戸支局。
昭和39年大阪本社整理部。
昭和47年1月週刊朝日編集部員。
10月副編集長。
昭和56年出版局プロジェクト室幹事。
昭和60年調査研究室主任研究員。
平成元年12月退社。フリージャーナリスト。
著作物は“沖縄・悲偶の作戦/異端の参謀八原博通”、“平賀源内江戸の夢”

本書の目次

まえがき 7
第一部 中国報道への弾圧 17
第二部 ソ連報道の奇怪さ 65
第三部 塗りつぶされた「戦争協力の研究」 117
第四部 「風にそよぐ葦」たちの迎合病 173
あとがき 230

本文中から抜粋

(7頁) まえがき
私は一九八九年末、三十年近く勤めた朝日新聞社を五十五歳になる寸前に退社した。…それは長いあいだ感じていた、朝日新聞の報道姿勢に対する疑問が払拭されるどころか、ますます強まっていき、…最も問題なのは、共産圏、特に中ソ、北朝鮮に対する甘さと自由主義圏特にアメリカや韓国に対する厳しさという、二重基準…
(182頁) 北朝鮮に対する遠慮は、いまも世界の興味の的である。金日成主席の子息金正日書記が独裁権力を受け継ぐのかという問題に如実に表れている。一体共産主義の理念と権力の世襲制度がどう繋がるか、この問題はマルクス先生も夢想だにしなかったに違いないが,これは左翼人士にとっても不愉快なことらしく、私も社内の左翼かぶれに会うとわざとその話題を持ち出して、困ったような顔を見るのが楽しみだった。
(197頁) 1967年から72年まで朝日新聞のモスクワ特派員だった木村明生氏が実質的な追放処分を受けた事件である。…在日ソ連大使館のプレス・アタッシュだったブロコンニコフ一等書記官(実はKGB中佐)が、しばしば朝日新聞本社を訪れ「木村の送ってくる記事は反ソ的だ。」…江戸時代の処世訓に「世の中は左様然らば御尤もさうござるかしかと存ぜぬ」
(236頁) あとがき この本は、雑誌「諸君!」の九一年七月号から十月号まで四回にわたって連載したものをベースに大幅加筆した。…特筆すべきは朝日新聞のOBの方々から…自らの体験を教示していただいたりもしたことだ。おかげで雑誌執筆当時は不分明だった部分も少なくなかった朝日新聞の社内事情の詳細を知ることができた、朝日新聞の偏向報道の背景について、…

コメント

朝日新聞とタイトルにあると、食わず嫌いで興味をもたれない人もいるかと思います。
しかし現在の報道が、どうして偏向報道ばかりになってしまったのか、内情が詳しくわかる貴重な本です。
筆者は歯がゆい思いをしながら、何とかバランス感覚を保つ努力をし、長年、朝日新聞で勤めてきましたが、流石に耐えられなくなり辞めた、と冒頭に書いております。
その過程を見るにつけ、よくぞ耐えた上で、このような本を上梓してくれたと思います。
新聞を読む前に、是非この本を読んで欲しいと思います。

インターネットのお陰でマスメディアの奢りが周知されるようになった事は喜ばしいことです。一時はクオリティ・ペーパーの頂点とされて「いた」朝日新聞が、今やなぜ没落の一途を辿っているのか?それを知る上で必読の一冊です。
著者が朝日新聞在籍当時からの記録。
朝日新聞の報道・ジャーナリズムに対する批判。
それを通して日本のジャーナリズムの欠点がみえてきます。
本書が1996年に発刊されたのですが、2012年現在の日本のジャーナリズムはどのようであるか、そこが知りたいですね。

まとめ

・結論から言うと、戦争責任は新聞社のあおりである。
軍部も、政府も戦争には慎重論派が内部にいた。世論に押し切られた。
・新聞はあおり倒すとよく売れる。それは事実である。

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