この本を読みふけっていると、知らぬ間に小説の中に入り込んでしまい、主人公になりきってしまって、ていたらくな自分が情けなく、申し訳なく思って来る。取り立てて奇抜な内容でもないのに、なぜか、目が離せない。つい、次のページをめくってしまい、終われない。
以上が前半である。後半はネタバレになるから、言えないけれど、感動のストーリーである。ぜひ、あなたも手にとって読んでほしい一冊である。
リリー・フランキー著 「東京タワー〜オカンとボクと、時々、オトン〜」 (2006年 本屋大賞受賞作品)
2005年6月30日 初版 扶桑社
リリー・フランキー氏のプロフィール
1963年11月4日に福岡県小倉市に生まれる。(現:北九州市)
・武蔵野美術大学卒
・職業:マルチタレント(俳優、脚本家、小説家、エッセイスト、イラストレーター、絵本作家)
・著書:
『東京タワー〜オカンとボクと、時々、オトン〜』
受賞::
2008年度 第51回ブルーリボン賞 新人賞
2013年度 第37回日本アカデミー賞 最優秀助演男優賞
2016年度 第40回日本アカデミー賞 優秀助演男優賞
第50回ブルーリボン賞助演男優賞
2018年度 第42回日本アカデミー賞 男優賞
本書からの抜粋
(146頁) 栄枯盛衰の無常、家族繁栄の刹那。人々が当たり前のように求める。その輝きと温かさを玉虫色のものだと不信な眼でしか見ることしができなかった。祭りの後の空虚さ。消え入りそうなものへの恐怖感。ボクはその恐ろしさにずっと怯えてゆく。表面的な理想。薄っぺらな良識を馬鹿にした。必ず訪れる衰退に気づかず。型通りの幸福と…
(165頁) ふたりが離婚して、互いがこの先、一生会うことがなくても、ボクはどちらにも会う。そして、オカンの側にはずっといる。どちらか選べとくだらない質問をされたら、ボクは迷わず、オカンを選ぶ。ボクを育ててくれたのは、オカンひとりなのだから。
(236頁) 水着を着た六十代のおばさんが、ハワイの浜辺で割り箸を握りしめ泣いていた。みんなはそのやり取りをしばらく眺めていたが、一番上のノブエおばさんが他の姉妹を代表するように口を開いた。「修ちゃん、あんた、そんな言い方ないやろ。あんたのお母さんは若い頃、そら、苦労してから、あんたたち子どもを育てよるんよ。こうやって切りつめながら、自分のもんやらひとつも買いきらんで、あんたを育てて学校に行かしよるんやないの。それを、そんな言い方ないやろう」
コメント
(読書メーター)
・久しぶりに泣いてしまった。昔はこんなオカンが多かったかも…。リリーさんの実話ですよね。オカンの息子を思う愛情がひしひしと伝わってきた。闘病の場面は辛かったな…。親孝行しないとと感じさせてくれた一冊。
・自分読みやすさ、ユーモア、強烈な感動! 同時代の我らが天才リリー・フランキーが骨身に沁みるように綴る、母と子、父と子、友情。この普遍的な、そして、いま語りづらいことがまっすぐリアルに胸に届く、新たなる「国民的名作」
(ブックオフレビュー)
・お母さんの愛がどんなにあったかくて絶えないものなのかを考える 家族と一緒にいられる間は一緒にいて、親孝行しなきゃな〜
まとめ
・母への思いの詰まった一冊である。長編とは思えないほど、一気読みしてしまう。
・読み易い。文章に無駄がない。ベストセラーになった理由がわかる。
・自分の恥をさらけ出しても、母の生きた証を残したい。この本は自分に課した贖罪のつもりで書いたのだろうか。
☆病院のベッドで、母親を前にして、何もしてやれない歯がゆさ。病室内で書き始めた手記。この本はこうして、生まれた。著者が今まで大切に育ててくれた母への想いを一語も逃さず、この本に残したい。この本はオカンの生涯そのものである。読者には慈しみをもって、この本を扱って欲しい。
☆昔から、日本にはこういう言い伝えがある。「いつまでもあると思うな親と金」リリー·フランキーはそういう実体験をした。多くの人たちは親をなくしてから、後悔に苛まれる。少なくとも、リリー·フランキーは母の晩年を母と東京で一緒に暮らし、彼女を慕う沢山の人とともにあの世に彼女を見送る事が出来た。後悔はあるだろうが、充分果たしたのではないだろうか。

