この書物の前半は大学の楽しさ、留学の魅力、研究の醍醐味を教えてくれます。大学をめざす人にはぜひ読んで欲しい部分です。
途中からは騒動の真相に迫っていきます。さすが、科学者!例え、自分に不利な内容でも、真実から、目をそらさない。書くのもつらい、読むのもつらい。耐えて読みきってください。
小保方晴子著 「あの日」 2016年1月28日初版 講談社
小保方晴子氏のプロフィール
1983年(昭和58年)9月25日生まれ
千葉県松戸市出身
早稲田大学、東京女子医科大学、ハーバード大学大学院、理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(CDB)で研究に従事。
本書の目次
はじめに
第一章 研究者の夢
第二章 ボストンのポプラ並木
第三章 スフェア細胞
第四章 アニマル カルス
第五章 思いとかけ離れていく研究
第六章 論文著者間の衝突
第七章 想像をはるかに超える反響
第八章 ハシゴは外された
第九章 私の心は正しくなかったのか
第十章 メディアスクラム
第十一章 論文撤回
第十二章 仕組まれたES細胞混入ストーリー
第十三章 業火
第十四章 戦えなかった。戦う術もなかった
第十五章 閉ざされた研究者の道
本書から抜粋
・(はじめに) 2頁
重すぎる責任に耐え兼ね、死んでこの現状から逃れられたら、と何度も思いました。私は重要な判断を他者に委ね、従えばいいと考えていた弱さや未熟さのある人間です。これまで、他の方に影響が及ぶことを恐れ、私からの発信を控えてきました。しかしここまで社会を大きく騒がせたこの出来事に対し、このまま口をつぐみ、世間が忘れていくのを待つことはさらなる卑怯な逃げであると思い、…、
・(第三章 スフェア細胞) 56頁
バカンティ研には論文をまとめるデータを取得するための十分な実験設備がなかったが、他の研究室に緊張しながら機器使用のお願いに行くのも、研究者としての自覚が湧くものだったし、自分が立案した研究が形になっていくのは純粋な喜びだった。機器使用を一番多くお願いしに行った研究室の教授は、休日に細胞の染色を行っている私の実験風景を真後ろで見ていてくれたこともあり、「バカンティ研での留学が終わったら、次はうちで留学しませんか」…
・(第十四章 戦えなかった。戦う術もなかった) 229頁
これ以上の証言はむなしいだけだと思った。「これはもう何を言っても、私一人単独での不正判定が覆ることはないんだと。」1回目の聞き取りですでに感じ取った。口調は柔らかだったが、うなずけば不正を認めたように受け取られる。自白を強要するような聞き取りの方法だと感じた。
・(第十四章 戦えなかった。戦う術もなかった) 232頁
「ありがとうございます」と答え、一例をして部屋を出た。しばらく大変になるような調査結果が出されるんだな、と考えながら廊下を歩き、電気の消えた控室の中に戻ると、ぼろぼろと涙がこぼれ落ちた。戦うべきだったのかもしれない。でももう、あがくには遅すぎた。
コメント
(紀伊国屋レビュー)
・現代の魔女裁判を見ているようだ。「美しい神の世界を人間にわかる言葉にするのが科学者の仕事なんだ。」との笹井氏の発言は、人類の発展に尽くす一科学者の矜持であり、故に同氏の魂の安らからん事を祈る。ところでこの一連の騒動で我々は何を明らかにしたかったのか?複数の人間を追い込まねばならない程の社会的な正義・理由は何で、事件を通して社会は正しい方向に進んだと言えるのか。誤りを正す事は必要。しかし過ちを犯した者を社会的に葬り去らねばならない程、この事件は社会に悪影響を及ぼしたのだろうか。日本社会の闇を強く感じる一冊。
(楽天koboのレビュー)
・あそこまで窮地に追い込まれていた女性がどのようにしていたのか、どのように向き合っていたのか、どのように乗り越えるのか、同じ年齢の働く女性として、あくまで世間の騒動が終わってからも、なんとなく気になっていまして、手記の販売をミヤネ屋で知り、自身の電子書籍購入の第一号にこの本を選びました。
恐らく講談社のオファーにも彼女はなかなか簡単には引き受けなかったと思います。
このような本を世に出すまでにされた講談社に、凄い。ありがとうございます。と思います
(読書メーター)
・不正も捏造もこの方はなさっていないと私は思っています。(ミスはあったのかもしれません。)もし、そういうことがあったとするならば、この方の知らないところで何かが動き、そして、大きな渦に巻き込まれて行ったのではないでしょうか。実験も全くの1人では出来ないものでしょうから。そして、恐ろしく感じるのは報道の在り方。テレビも新聞も雑誌も。
まとめ
・全ての事象、事件を検証し、反省し、進化する。科学の世界はそうして、華々しい発展を遂げてきた。この本は、目の前の事象に目をそむけず、事実を明らかにする、まさに科学者らしい真摯な姿勢に敬服します。
・日本には優秀な科学者をいじめる風土がある。野口英世さんがそうであった。北里柴三郎さんもひどい目にあった。小保方さんはよく耐えた。笹井氏はひどいバッシングで亡くなられた。合掌。
・正義のために勇気を出して、執筆された小保方さん、支えた講談社の方々。頭が下がります。よく、リスク、抵抗をはねのけました。ここ数年、ネット社会では、過去の「闇」や「まちがった事実」が次々と、暴露され、老いも若きも、真実に気づき始めました。明るい未来が来る事を信じたい。
☆自死を選ばなかったのは、良かった。良く耐えた。世の中には意地悪く、あおるやからばかりではない。貴方を支持している温かく見守っている人たちもいることに、気づいてほしい。

