平成の名著 川喜多愛郎著 「パストゥール」 岩波書店

細菌学者パストゥールの功績、業績をこと細かく、紹介しています。そしてパストゥールの激しい言動も、真実を伝えるため、真実を守りぬくためであると、著作者は表現しています。この本は、全編を通して著作者のパストゥールに対する敬意が伝わってくる名著だといえるでしょう。

川喜多愛郎著 「パストゥール」 岩波書店 1995年4月20日  初版

パストゥールのプロフィール

ルイ・パストゥール Louis Pasteur (1822年12月27日 〜1895年9月28日)
生化学者、細菌学者
王立協会外国人会員。ロベルト・コッホと共に「近代細菌学の開祖」と言われている。
フランスのジョラ地方ドール生まれ。
父はなめし職人。
1843年にパリのエコール・ノルマル・シュペリウール(高等師範学校)に入学する。1846年に博士号を取得。

パストゥールの業績

・生命の自然発生説の否定を正確な実験により証明をする。
・発酵のメカニズムを解明。
・フランスの養蚕業が壊滅的打撃を受けた時に、蚕の病気の原因を究明した。
・ブドウ酒の低温殺菌法の確立。
・狂犬病ワクチンの発見。

著作者のプロフィール

川喜多愛郎(かわきたよしお)
1909年 東京に生まれる。
1932年 東京大学医学部卒業
晩年は千葉大学名誉教授
専攻は病原微生物学 

川喜多愛郎氏の著作物

「感染論」「ウイルスの生物学」(編著)「生物と無生物の間」「ウイルスの世界」「小児マヒ」(編著)

本書の目次

はじめに
第一章 若い化学者、酒石酸の結晶
第二章 発酵の研究(その一)
第三章 自然発生説論争
第四章 発酵の研究(その二)
第五章 蚕の病気とその対策
第六章 発酵の研究(その三)
第七章 伝染病と微生物
第八章 病原体の弱毒化と予防接種
あとがき

本書からの抜粋

(32頁) 一方的な旋光性を持った有機物質の合成が自然界の生物によってのみ可能である、という事実は、若いパストゥールにはなはだ深刻な印象を与え、彼を生物学に導く動機となりました。そして、「生命」の底知れぬ深みが、その生涯の終わりまで彼を招きつづけ、彼の天才を存分に開花させることになったのでした。

(39頁) 一八五四年の秋、パストゥールは、リールの大学に新設された理学部の学部長兼化学教授に任命されました。三十をこえて、まもないころで、これからいよいよ仕事に油が乗ろうというところです。こののち二十年たらず、彼の主力は発酵の本質とその実地改良の研究に捧げられ、その間に微生物学なる新しい科学の基礎が、ほとんど彼一人の手で固められたのでした。それは生物学史上の偉業の一つです。

(164頁) 実際的成果はようやく国の内外で正しく認められ、その名声は日ましに高いものとなりつつあります。一八七六年の九月にミラノで国際養蚕会議が開催され、…ミラノの近傍に蚕種選別工場に案内されましたが、そこでは一日四万袋ものガ(蛾)が、袋取り法とよばれる彼の工夫した方法でよく組織された作業方式に従って検査され、目覚ましい実績を挙げつつありました。

まとめ

・ パストゥールの激しい言動はときには、彼の敬愛する師に対しても、みられるのは真実に対する自信と、真実を守り、貫く強い意志の現れです。いずれ師も、パストゥールの熱意に事実を認める事になります。
・ この本はパストゥールの全てを細部に至るまで、描ききれています。著作者のパストゥールに対する敬意も感じ取る事が出来ます。
・ パストゥールを含め、この時代に生きた科学者は将来、科学発展のヒントを引き出す重要な役割を果たしています。ウイルス発見や分子構造解読などの未来につながる大事な示唆がみられます。

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