加齢黄斑変性治療のための眼内注射液アイリーアのバイオ後続品はいつ発売されるのか?

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先の記事で、知人のOさん(70歳台前半)が、血液サラサラの薬イグザレルトと、眼内注射液アイリーアの高額の医療費負担に悩んでいるお話しをしました。
今回、アイリーアについて、一般薬のジェネリックに相当するバイオ後続品(バイオシミラー)が、発売されない状況をまとめました。

眼内注射液アイリーアのバイオ後続品はいつ発売されるのか?

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アイリーアのバイオ後続品の発売時期は?

加齢黄斑変性治療などのための眼内注射液アイリーアのバイオ後続品(バイオシミラー)はいつ発売されるのでしょうか?

Oさんは、3年ほど前にかかった右目の網膜静脈閉塞症で、浮腫を防ぐため、3か月ごとの眼内注射(アイリーア)を受けています。しかし、3割負担のため、1回5万円の費用が必要です。年20万円、検査費用やなども含めると、これだけで、年30万円近くの医療費を場合によっては1生負担することになります。

筆者は、民間企業で医薬関連の知的財産部門での経験のほか、長くはありませんが、バイオ関連の研究に携わったこともあります。

バイオ後続品(バイオシミラー)について

バイオ後続品 (バイオシミラー)」とは、先行バイオ医薬品の特許が切れた後に、他の製薬企業から発売されるバイオ医薬品の後発薬です。
ここで、「バイオ医薬品」とは、遺伝子組換え技術などにより細胞、酵母、細菌などから産生されるタンパク質由来の医薬品のことで、現在抗体製剤の分子標的治療薬 (抗がん剤など) やインスリン製剤など多くのバイオ医薬品が存在します。
アイリーアもこれに含まれます。

一般の後発医薬品と異なり、バイオ医薬品は、分子サイズが大きく、構造が複雑なため、製造業者が異なることによる製造工程の違いの影響を受けやすいいとの特徴があります。そのため、バイオ後続品は、先行バイオ医薬品との同等性 / 同質性を証明するために、新薬に準ずる様々な試験(品質試験、薬理試験、毒性試験、臨床試験など)が必要とされています。これらが同等であることが確認されて、初めてバイオ後続品として承認されます。

2022年11月16日 現在で、日本で承認されているバイオ後続品 (バイオシミラー)は15種あります。

アイリーアの売り上げ

DME(糖尿病黄斑浮腫)など、加齢黄斑変性の標準治療は、VEGF(血管内皮増殖因子)阻害薬の硝子体内注射です。VEGF阻害薬は「アイリーア」(アフリベルセプト(遺伝子組換え)硝子体内注射液(遺伝子組換え)バイエル薬品)と「ルセンティス」(ラニビズマブ(遺伝子組換え)注射液、ノバルティス ファーマ)の2種類で
トップシェアはアイリーアで、主要7カ国だけで10億ドルを売り上げています。
バイエルのアイリーアの販売は好調で、2018年3月期の日本での売上高は515億円(前期比14.1%増)と、ノバルティスファーマの「ルセンティス」(2017年233億円)を大きく上回っています。

加齢黄斑変性、糖尿病黄斑浮腫、網膜静脈閉塞症など、VEGF阻害薬が使われるケースは高齢化とともにますます増えることが予想され、例えば、
糖尿病患者の糖尿病網膜症の有病率は15.0~23.0%
40歳以上の日本人では網膜静脈閉塞症の有病率は2.1%
などとなっています。

アイリーアは、1年後の有効性がルセンティスよりも優れているデータや、注射間隔が、比較的長いことから、選好されているようです。

ルセンティスについては、千寿製薬が2021年12月9日、バイオ後続品として、VEGF阻害薬ラニビズマブBS硝子体内注射用キット10mg/mL「センジュ」を発売しました。
薬価は対先発品の53%となっています。

ただ、ルセンティスのバイオ後続品(BS)がアイリーアに及ぼす影響は限定的と言われており、アイリーア自体にバイオシミラーが発売されるまでアイリーアは他の追随を許さないとみられています。

アイリーアのバイオ後続品は、2022年2月15日に、厚生労働省が、承認しました。
但し、これも先のイグザレルトと同様、取得したのはバイエル ホールディング子会社のバイエル薬品販売で、トリアナ社長によれば、「今後の(BSや)後発品の参入を見据え、それに対抗できるオプションを持っておきたいとの考えで承認を取得した。戦略上のオプションを持っておくことなどによって、両剤の価値の最大化を目指す」などと、薬価がルール上7割となるバイオ後発品を当面製造販売に踏み切る考えはないようです。

海外では、バイオジェン(米)が、アイリーア(R)(アフリベルセプト)のバイオシミラー候補としてSB15(アフリベルセプト)開発中との情報があります。

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アイリーアのバイオ後続品(バイオシミラー)が発売されない3つの理由

バイエルの戦略
バイエルは薬価が約7割となるバイオ後発品の出現により、アイリーアの売り上げが落ちることを防ぎたいとの意図があると思われます。
イグザレルトと同様の戦略です。

先発メーカーのバイエルが承認取得したバイオ後続品AG(オーソライズドジェネリック)であれば、同じ製造工程を使っているなど、バイオ後続品の採用を阻害すると思われ、競争原理が働かない可能性があります。

バイオ後発品の開発の困難性
一般薬品の後発品に比べて、バイオ後続品は、先行バイオ医薬品との同等性 / 同質性を証明するために、開発に手間がかかります。
ルセンティスの場合は、バイオ企業のキッズウェル・バイオ(前ジーンテクノサイエンス)と千寿製薬が共同開発して販売にこぎつけました。
様々な試験が必要となるためか、適用される対象疾患も順次承認されているようです。
従って、参入する後発品メーカーは限られると思われます。
アイリーアのバイオ後続品についても、ジーンテクノサイエンスが、前臨床段階までは手掛けていたようですので、ルセンティスとくらべて、何らかの困難があったのかもしれません。または、先のバイオ後続品の様子を見て、開発を続けるのかもしれません。

ただ、海外では、バイオジェンなどで、アイリーアのバイオ後発品の開発は進んでいるとの情報はあります。

厚労省の支援、指導
医療費節減のため、ジェネリック、後発品について、数量基準で80%も目標をかかげ、ほぼそれが達成された時点で、バイオ後続品は低分子化合物と比べ、浸透が進んでいない現状があり、使用促進に向けた施策が求められているとして、2021年8月薬価ベースでの医療費適正化効果額を指標とするとしました。
今後、高齢者の医療費が一段と増えることが予想される中で、バイオ後続品による医療費節減はキーとなります。

ベンチャーが多いバイオ開発企業への支援や、AG承認を取得した先発企業への指導などやるべきことは多々あるのではと思えます。

そもそもバイオ後続品を含むバイオ医薬品の研究開発や製造は、日本では基盤が脆弱で、海外バイオ企業に大きく遅れ、分業も進んでいません。このままでは、国内企業が開発中のバイオ後続品より、既に承認を取得し製法が確立した海外製が選ばれやすいことになりかねません。
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バイオ後続品、アイリーアに対するSNSの反応

[st-kaiwa3] 本日もアイリーア。目玉に注射である。2回目なので比較的冷静だった。が、今回の方が圧迫感強くて現在もなんだかキモチワルイ。
[/st-kaiwa3] 引用:https://twitter.com/hallyQ2SHIBAinu/status/1616399239172743169
[st-kaiwa4] 昨日は眼科の検診でアイリーアっていう処置をして目に注射を打ったんだよ💉(もちろん点眼麻酔はする)「イタッ(°д०॥)✷✸」ってなったけど病院の帰りにクソ寒い中、死んだ友達のことぼんやり考えてた
なんでそんなにせっかちに逝くんだよ
なんでこっちは目ん玉に注射打ってまで長生きしようとしてるのか
[/st-kaiwa4] 引用: https://twitter.com/iQOS99673195/status/1617920281426944000
[st-kaiwa5] 製薬会社が米国特許制度を巧みに合法的に利用し競争を妨害してヒュミラで大儲けした話。バイオシミラーが後追いすることを阻み時間稼ぎ、6年間のうちに年間5万ドルの定価が今8万ドルですって。
そりゃ開発した製薬会社としては当然儲けをいつまでも独占していたいでしょう。いやしかしエグいなぁ。
[/st-kaiwa5] 引用:https://twitter.com/Rheumamo/status/1619477034417418240
[st-kaiwa6] RA治療のエタネルセプトがコロナのせいで入荷されず先発のエンブレル使い出して一年
やっとエタネルセプト入荷が安定したっぽい助かる
ジェネリックとは違ってバイオシミラーだから劇的に安いわけじゃないけどそれでも助かる。
とはいえ一月2万強かかるのは辛い
[/st-kaiwa6] 引用:https://twitter.com/kujirasae/status/1619223458101227521

まとめ

わかりやすくまとめると

  • 加齢黄斑変性などの治療のための眼内注射液アイリーアのバイオ後続品の発売時期は不明
  • アイリーアのバイオ後続品が発売されない3つの理由を挙げた
  • バイオ医薬品の価格の高さに困っている患者の声が多い
[st-kaiwa2 r] なんとかこの状況を打ち破れないものか?どんどん日本が後進国になってゆく![/st-kaiwa2]

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