平成の名著シリーズ第3弾として「ユニオンジャック…英国旗ができるまで」をお届けします。
歴史を別の角度で覗くと、なぜこれほどまでに、人をわくわくさせるのでしょうか。
単にイギリス国旗が完成するまでの話なのですが、それに至るまでの紋章の変遷、
形の移り変わり。歴史とのかかわり、魅力的なエピソードなど。
森護氏の知識の深さと広さには恐れ入りました。
読み進むうちに、推理小説のように次の展開が気になって、後半はくぎ付けになってしまいました。
森護氏の他の著作もきっと読者を満足させると思います。
森護著「ユニオンジャック…英国旗ができるまで」中公新書1992年6月
目次
第一章 ヴェクシロイドの時代
第二章 旗の時代の始まり
第三章 紋章と旗
第四章 中世イングランドの旗
第五章 近世の旗
第六章 ユニオン・フラッグ
第七章 ユニオン・ジャック
内容
・イギリスの国旗といえば赤い放射状のデザインを頭に浮かべます。
一見シンプルに見えるが、憎いひと工夫があります。
・現在のイギリス国旗を語るのには、遠い昔の“紋章”から始まります。
“紋章”は貴族個人に与えられた記号で、その中に出自が書き込まれたりしますが、厳しい紋章官という役人がいて、正しくないと承認されない。
戦争の論功行賞で、誰が活躍したか識別する必要があります。
その個人の紋章や旗が軍団を表したり、大将の位置を表したり変化してくる。
それまでは陸上の戦争で済んでいたのが、スペインの無敵艦隊との戦いや、
新大陸発見により、商船や軍船に識別の旗が必要になってくる。
・イギリスはイングランドとスコットランドとアイルランドの連合国を表す旗が必要になりました。
しかし、3つを優劣がないように重ねなければ、各連合国民の反感を買って、また反乱が起きて、バラバラになりかねない。
やはり、知恵者がいるもので、それが現在の旗の誕生である。
著者森護氏について
1980年ごろから、沢山の著作によって、西洋紋章の面白さ、深さを日本人に伝えた紋章研究の第一人者である。
1923年に奈良県に生まれる。
1946年に早稲田大学商学部を卒業する。
1946年にNHKに入社する。
NHKでは政治部記者。神戸放送局放送部長、国際報道主管。
1980年定年退職する。
他には文教大学講師。
※特筆すべきは大阪港紋章のデザインを指導、監修し、西洋紋章に引けを取らない紋章に仕上がっています。
彼の功績は大きい。
コメント
(アマゾンレビュー)
イギリスの国旗が完成するまでの歴史を詳細に記した本。国旗の誕生は単純なものではなく、民族間の複雑な関係が絡み合って誕生するものだと言うことがわかりました。イギリスの歴史や文化に関心のある人にお薦めします。
タイトル通り、ユニオン・ジャックと呼ばれるイギリス国旗が出来るまでの歴史的な変遷をたどった本。
複雑な意匠を持つユニオン・ジャックが、いくつかのデザインの組み合わせだということは話に聞いていたが、この本のように丁寧にその変遷を追ってくれると、イギリスの歴史がそのまま旗のデザインに反映されていくのがよくわかって実に興味深い。なぜ旗を必要としたかという根本的な疑問から筆を起こしているのも好感が持てる。
イギリスの旗だけで一冊の本が出来てしまうのだから、他の国の旗にも相応の歴史があるのだろう。旗に歴史ありを実感させてくれた本である。
(読書メーターのコメント)
ユニオン・ジャックの歴史は同時に英国の歴史だった。文字通り国旗や紋章には歴史が反映されており、記号一つとっても厳格なルールがあるのは面倒だと思ったが、きちんと理解すれば見るだけでルーツが分かるというのは面白い。英国の歴史に関しても教科書に載る観点とは若干違う視点から描かれており、英国史の本としてもお勧めの一冊。
ユニオン・ジャックを論じると同時に、イギリスにおける識別(個人から国家まで)の歴史を概観する書物にもなっている。それらはイギリス史に深く関わっていることにも言及されている。つまり、ユニオン・ジャックはイギリスの歴史の集大成ということがわかる一冊。特に、聖パトリック十字が組み込まれた際の、政治的配慮とデザイン性を満たした工夫に脱帽(パトリック十字の正当性はともかくとしても)。紋章の見方等、かなり細かい説明もあるが、図版が多くわかりやすい。また、イギリス史についても丁寧な解説があり、門外漢でも楽しめると思う。
まとめ
・森護氏の“ユニオンジャック”を紹介しました。森護氏の知識は豊富過ぎて、この一冊に収まりません。他の本も読まれることをお勧めします。
・この本を読めば、同時に英国史にも精通します。
・英国旗“ユニオンジャック”の奥深さが分かります。
教科書と違って、別の角度でとらえた歴史書って、なぜ、これほどまでに人をワクワクさせるのでしょうか。
イギリスはどうして、このようなデザイン性の高い旗や紋章を生み出せたのか。
歴史を深く考証してみて、初めて明らかになってくる。
一つのリボンにさえ、納得させる理由があり、鑑賞するものをうならせるだけの意味がある。
これを研究し、成果を披露していただいた森護氏には感謝です。