今回紹介の昭和、平成名著シリーズは“新装版 第五 物理の散歩道”(ロゲルギスト著)です。
内容は物理に関するものにとどまらず、あらゆる社会現象を5~7人で討論。エッセイをまとめた出版物です。
同人誌の色彩が強く、また
ロゲルギスト(Logergist)は個人名ではありません。エッセイスト全員の総称です。
由来は本書を参照してください。
“新装版 第五 物理の散歩道”(ロゲルギスト著)2010年2月9日 出版 岩波書店1800円
ロゲルギストの発端は古く、1950年ごろに日本の物理学者が集まって、討論した同人会であります。
「ロゲルギストのメンバーたち」(記載履歴は“新装版 第五 物理の散歩道”を参考にしました。)
◎近角聡信
1922年生まれ
東京大学理学部 物理学科卒
東京大学名誉教授 専門は磁性物理学
◎磯部孝
1914年生まれ
東京大学理学部 理学科卒
東京大学名誉教授 専門は計測と制御
◎今井功
1914年生まれ
東京大学理学部 物理学科卒
東京大学名誉教授 専門は流体力学
◎近藤正夫
1911年生まれ
東京大学理学部 物理学科卒
学習院大学名誉教授 計測物理
◎木下是雄
1917年生まれ
東京大学理学部 物理学科卒
学習院大学名誉教授 専門は表面薄膜の物理
◎大川章哉
1918年生まれ
東京大学理学部 物理学科卒
学習院大学教授 専門は結晶物理学
◎高橋秀俊
1915年生まれ
東京大学理学部 物理学科卒
東京大学名誉教授 専門は物性論、電子工学、情報科学
目次
新装版刊行にあたって
はじめに
第一部
・月では昼間星が見えるか
・かや葺き屋根はなぜ漏らぬ
・霧はなぜできるか
・蛇行よろめき談義
・ぬれた砂はなぜ黒い
第二部
・水玉はどう縮む
・渦を忘れた魚
・フィゾー法の影武者
・続フィゾー法の影武者
・ころがるボールの力学
・日月問答
第三部
・通信を考える
・エネルギーの捨てどころ
・パルスとレベル
・熱の運び屋
・要約のすすめ:反要約のすすめ
本書からの抜粋
・(新装版の刊行にあたって)
この度ロゲルギストエッセイ「物理の散歩道」が新装版として出版されることとなったことは、
ロゲルギスト同人の一人として喜びにたえない。
思えば、ロゲルギストが随筆を書き始めたのは半世紀ほど前のことであった。…
・(3頁)(月の上では昼間でも星が見えるか)
「月の上では星が見える」という伝説がある。いやあったというべきかもしれない。
数年前までは科学小説の対象でしかなかった月世界…の旅行記で、…「空気のない月の上では、…そこは昼だというのに無数の星がきらめいていた」といったものであった、…科学的迷信の一つ…。
・(49頁)(蛇行よろめき談義)
D なるほど。とすると、ウロコの抵抗説はあやしいかな?
F 実際にどうか分からないけど、仮に蛇のウロコが後ろ向きに生えていたとしても、そのために前に進めるんだと考えるよりも、前に進むのはウロコとは別の原因で、ただ前に進むのに具合がいいようにウロコが後ろ向きに生えているんだと考える方が、ぼくには自然に思えるね。
E ぼくもその意見に賛成だな。
・(一番最後の表紙のそで)
ロゲルギストのLogergist;ギリシャ語のロゴス(Logos)つまり言葉と、エルゴン(ergon)つまり仕事と一緒にしたもので、情報とエネルギーを意味する。世界はこの二大要素から成り立っていると考え…。
コメント
当時、ロゲルキストの発想に感動し、誰かに本を貸したのですが戻って来ず、もう一度読みたいと思っていた本です。
面白かったですよ。
でも、かなり 難しい内容です。
「そこそこ」の知識がないと、著書の面白さを理解できないと思います。
(出典:アマゾンレビュー)
まとめ
・著作者ロゲルギストは個人ではなく、エッセイストメンバー全体の総称である。
・物理学をいろんな角度から語り、肩の凝らないエッセイではあるが、時には深堀りし、読者を引きつける。
・1950年代、60年代当時は斬新な発想の出版物として、評判を呼んだ。
今読んでも、刊行当初の輝きを失っていない。