今回紹介の昭和、平成名著シリーズは「指揮官たちの特攻」(城山三郎著)です。
太平洋戦争末期に、未来ある若者が、特攻に駆り出された背景と、彼らの思いを忠実に再現した城山三郎氏の傑作です、
何故に、未来ある若者が、早死にを選択することになったのか。
歴史は精査し、検証し、反省し、改善して、初めて、生きてくる。
はたして、未来の宝物である現代の若者は大切にされているのだろうか。
城山氏が問いかけたかったものは何か。是非に一読をお勧めしたい。
城山三郎著「指揮官たちの特攻」20001年8月発行 新潮社
城山氏のプロフィール
城山三郎(1927年8月18日-2007年3月22日)本名は杉浦英一です。
経済小説、伝記小説、歴史小説の作家。
愛知県名古屋市中区に生まれる。
・1945年愛知県立工業専門学校(後の名古屋工業大学)に入学をする。
・帝国海軍に志願入隊。
・海軍特別幹部練習生として、伏龍部隊(特攻隊)に配属。訓練中に敗戦となる。
・1946年東京産業大学(後の一橋大学)の予科に入学。
・1952年一橋大学を卒業。
・愛知学芸大学(後の愛知教育大学)商業科文部教官助手に就任。
・1963年6月愛知工業大学専任講師を退職する。作家に専念する。
目次
この本の目次はありません。
本作品は、平成十三年五月からの小説新潮誌上での「花びらの幸福―青年指揮官たちの特攻」と題した四回にわたる短期集中連載に、大幅に加筆したものです。…あとがき より
本文の中から抜粋
・(43頁)
…これに対しても、全員がすかさず、「行かせてください」と声を上げたと、副長たちは伝えるが、これもおかしい。
押される一方の戦況から、若者たちが危機感や焦燥感を抱いていたとしても、いきなり、「明日にでも死ね」と言われて、即答できるわけがない。すぐには声が出ない若者に「行くのか行かないのか」声をはりあげ、はじめて全員応募したというのが真相のようである。
・(45頁)
取材にかけつけた同盟通信特派員の小野田政は関大尉に会え、その本音ともいうべき最後の言葉を聞き取っている。それは、「日本もおしまいだよ。ぼくのような優秀なパイロットを殺すなんて。ぼくなら、体当たりせずとも、敵母艦の飛行用甲板に五0番(五00キロ爆弾)を命中させる自信がある。」「ぼくは天皇陛下とか、日本帝国のためとかで行くんじゃない。最愛のKA(家内)のために行くんだ。…」
・(172頁)
騙し打ちに始まり騙し打ちに終わる日本は世界中の非難を浴び、軍はもちろんあれほど護持しようとした皇室もまた吹き飛ぶことになったかもしれない。
実は、広田弘毀元首相が…「長州がつくった憲法が日本を滅ぼした。陸海軍は天皇が親率するという“統帥権の独立”をふりかざして、政治を踏みにじり暴走に暴走を重ね…」
コメント
(アマゾン・レビュー)
妙な脚色がされていないだけ、何かひしひしと訴えるものがありました。
もう、好き嫌いとかではなく、本を開いた瞬間から最後まで読まないといけないという気になりました。
特攻を指揮して生き延びた指揮官は、どういう心境でいたのか、敗戦の責任を果たしたのか。
(Rakutenブックス・レビュー)
読了…
この本は何年か前に
親父の書架から拝借した一冊
当時はまだ日本の戦史に興味も薄かったので読まずに積読してました。息子とは、同じ本を読んで感想を共有した事有りますが、父とそういった経験は出来ませんでしたので思えば残念です。
まとめ
・太平洋戦争終結直前に多くの若者が特攻に加わり、命を落とした。どういう気持ちで、その場に臨んだのか、城山三郎が取材を重ね、解き明かしていく。
・何故に未来を担う宝である若者を稚拙な作戦で、早死にさせなくてはいけなかったのか。作家城山三郎氏の問いかけが伝わってくる。
・既に遠い過去の戦争の話ではあるが、世界は着実に第三次世界大戦に向かっている。
歴史を検証、改善することなく、同じことが繰り返されるのか。